ハムやベーコンやソーセージなどの加工食品を多く食べると、リン酸塩を摂り過ぎるという話は有名だ。
そのため、「リン酸塩不使用」を謳い文句にしているハムやソーセージも増えており、安心して食べている人もいるだろう。
また、最近だとコンビニ弁当なども指摘されるようになってきて、気をつけている人もいるかもしれない。
しかし、普通の食生活をしていると、加工食品を食べなくともリン酸塩を摂り過ぎてしまうことは、あまり意識されていない。
リン酸塩の何がまずいかと言えば、動脈硬化の原因物質を生み出すというのが一番である。
また、リン酸塩はカルシウムや鉄分の吸収を阻害するため、歯や骨がもろくなったり、貧血の要因にもなりやすい。
もともとリンは人体に不可欠な要素であるため、少なくてもいけないから、あまり減らしすぎるのも良くないが、やはり摂り過ぎには注意が必要だ。
そんなリン酸塩だが、もともとリン自体はあらゆる動植物の細胞に含まれているものだ。
実際に、肉や魚や乳製品など、ほとんど全ての食材にリンが含まれている。
問題は、そうしたものの総計で1日の必要摂取量(成人男性1000㎎、成人女性800㎎)に届いてしまうことだ。
そのため、食品添加物などでリン酸を余分に摂取すれば、必要量以上に摂ることになる。
現実には、「これ以上を摂ると危険」という耐用上限量というものがあり、成人男女でなんと3倍の3000mgとなっているため、そうそう超えることは無い。
しかし、これだけの量を「超えないから大丈夫」と言うのも微妙なわけで、やはり取り過ぎには注意が必要だろう。
(ちなみに、「摂りすぎた分は尿になって排出されるから大丈夫」という説もあるが、そのぶん腎臓に負担をかけるため、長期的に考えると大丈夫とは言い難い)
さて、そんなリン酸塩だが、ハムやベーコンに気をつければ良いかと言うと、全くそんなことはない。
リン酸塩は様々なところに使われているが、食品添加物として使われる場合は、リン酸塩とは別の名前で表示されている。
例えば、多くのパンに含まれている「イーストフード」、中華麺に入っている「かんすい」、チューインガムに必須の「ガムベース」などもそうだ。
また、パンだけでなく、お菓子にも欠かせない「膨張剤」「ベーキングパウダー」「ふくらし粉」などにも、様々なリン酸塩が含まれている。
さらに、お馴染み「調味料」「酸味料」「乳化剤」「pH調整剤」にも含まれており、リン酸塩が使われていないものを見つけるほうが難しいくらいだ。
このように、「リン」の文字がどこにもなくても、実はリンが含まれているというのが、今の多くの食品の実態だ。
こうして見ると、むしろハムやベーコンが目くらましになっており、「ハムを我慢したから大丈夫だ」と誤解してしまう人もいるだろう。
それに、ひょっとして「リン酸塩不使用」と書かれたハムやソーセージの中にも、調味料として実はリン酸塩が使われている・・・ということが無いとは言い切れない。
少なくとも、パンやお菓子にわざわざ「リン酸塩不使用」とは書かないわけで、ほとんど使われていると思ったほうが良いことは、ハムやソーセージのリン酸塩を気にするなら、覚えておいたほうが良いだろう。
なお、リン酸塩の取り過ぎが心配な場合は、吸収が阻害される鉄分やカルシウムを多めに摂るのも1つの手だ。
特に、リンとカルシウムは1対1のバランスで摂るのが良いと言われているため、加工食品や食品添加物を多く摂りがち人は、カルシウムも意識して摂るほうが良い。
また、マグネシウムを摂取することで、リン酸塩の過剰摂取を打ち消せるという報告もある。
サプリメントは避けたほうが良いため、ナッツ類、大豆製品、葉物野菜、海藻などのマグネシウムを多く含む食材を摂るのも良さそうだ。