新選組の局長として、多くの人が知っている近藤勇。
「今宵の虎徹は血に飢えている」のセリフでも有名だ。
ところが、近藤勇が持っていた虎徹が、実は偽物だったという説がある。
虎徹とは、江戸時代初期の刀匠である長曽祢虎徹が打った名刀である。
彼は、江戸時代の名刀一覧の中で、最上大業物十二工の最上位にも位置づけられている。
その切れ味は凄まじく、他の名刀が試し切りで罪人の死体2体を切り裂くのがやっとの中、虎徹は4体も切断したという。
他にも、石灯籠を切ったなど、どこまで本当かは分からないが、それだけよく切れる刀の代名詞となっている。
そのため、武士だけでなく、大名や豪商が虎徹を欲しがり、普通の武士にはとても買えないくらいまで値段も高騰した。
また、偽物(贋作)も大量に出回り、その割合は99%とも言われ、識者の間では「虎徹を見たら偽物と思え」という言葉があるほど。
本物を新選組に入ったばかりの近藤勇が買えるはずはなく、偽物を掴まされたという線のほうが濃厚で、実際に近藤勇の持つ虎徹は銘が削り取られていたとも言われている。
ところが、偽物でも良質な刀だったようで、近藤勇の虎徹はとても良く切れたようだ。
あの激戦となった池田屋事件でも、他の隊士の刀は折れたり刃こぼれしたりしたが、虎徹は無事だったという。
そして、近藤勇が有名になるに連れて、その虎徹好きも知られるようになり、本物の虎徹を差し出す大名や豪商が多く現れた。
結果的に、近藤勇は虎徹の銘の刀を複数持っており、中には徳川将軍家からもらった本物の虎徹もあったという。
以上、最初のものは偽物だったかもしれないが、最後にはちゃんと本物を持っていたというのが、面白いところである。